本の備忘録 千早茜の4冊
今回は千早茜の本を4冊。
全七話からなる連作短編集。
ミステリーではなく群像劇。
連作は各話での脇役が次の話では主役になっていたりして、その人のバックグラウンドが明らかになる点がおもしろくて好き。
誰と誰が繋がっていたのかなど、世間は狭いなぁと思いつつ楽しんだ。
個人的には一話目の「まいまい」の終わり方が、鬱々した中身を振り払う明るさで好き。
自分の読書傾向として、こういうシリアスな群像劇の小説は手に取らないのだが、次に紹介する千早茜の本が面白かったので、勢いで読んだ感じ。
文庫本の麗しいイラスト表紙につられて本屋で手にした一冊。
裏表紙のあらすじに「不老不死」の主人公とあったので、「ヴァンパイアものか?」と思ったが、違ったので購入。
私は「ポーの一族」以外のヴァンパイアものにはあまり関心が無かった…(「ドラキュラ」や映画の「トワイライト」シリーズなどは人気あるけどね)
でも倉橋由美子の「ヴァンピールの会」のような「実はこの人たちの正体は…」というような、日常と隣り合わせにある吸血鬼ものの恐怖は好きだ。
土着的おとぎ話風なイントロから始まるが、舞台は現代の東京。
主人公は日本の地方のとある一族の長であり、不老不死の美しい両性具有で病や傷を治癒する超能力者である。
主人公以外の登場人物も魅力的。
ダークで凄惨な美を散りばめた、深夜に放送する大人向けアニメにもなりそうな内容だと思った。
シリーズ化されるのかと思ったけど、作者はそんな気無さそう。
文庫の幻想的な表紙がすっごく好き。
岡上淑子のフォトコラージュ「沈黙の奇蹟」。
中身の短編小説は、どれも残酷と幻想に彩られている。
ふわりと宙ぶらりんな感情にされたまま終わる物語もあれば、うっとりとした余韻にひたれる作品もあり。
間にもハッとするフォトコラージュが挟まれていて、目にも楽しめる短編集なのであった。
「新釈西洋童話集」というサブタイトルがあって、西洋のおとぎ話をベースにした現代の大人のおとぎ話である。
「ヘンゼルとグレーテル」、「シンデレラ」、「白雪姫」など、誰でも知っている童話が千早茜によって容赦なく辛い調味料たっぷりに調理されています。
特に「ハーメルンの笛吹き男」をベースにした物語がうまい。「そうきたかー」といった千早流の力技を堪能いたしました。
童話では「かわいそうな子」が、ここでは「利己的な加害者」に変貌したりするのもおもしろい。